値付けの未来〜ダイナミック・プライシングについて

値付けの未来〜ダイナミック・プライシングについて
2020年8月26日 sofu

こんにちは。創風塾です。

今日のコラムでは、創風塾塾長の江上鳴風が、
「値付けの未来」からダイナミック・プライシングについて
お伝えします。

パーソナル・ブランディングを立ち上げていく過程で、
塾生の多くが、新たな商品やサービスに価格をつける、
または、価格改定を行っています。

「値付けの未来」

貴社も、あなたも参考にしていただけるとうれしいです。
それでは、メッセージに引き続きお聴き下さい。

 

 

よく、マッサージを
受けに行きます。

肩こり、首のコリ、
それから書きすぎによる
腕のコリ。
(腱鞘炎に近いもの)

このメールマガジンも
そのコリの原因のひとつです。(笑)

そこで、いつも不満に思うのが
マッサージ師が初心者であろうが、
熟練の方であろうが、
単価がいっしょだということです。

たとえば、一律6,000円。

ベテランと初心者で値段がいっしょ。

一方は弱い力で、ツボを外しまくって
大して効果がない。

一方は適度な心地よい力の入れ具合で
ツボに入り、かつ終わったあとの
からだの筋疲労の抜け具合が
思い切り違う。

それがなぜ同じ価格なのか。

理解に苦しむことが良くありました。

要は当たり外れです。

宝くじじゃないんだから。

本来は
当たり外れがあっては
いけないはず。

だって、レンタカーで
年式が古いカローラと
最新式のベンツが同じ値段。

それで、どっちが来るかは
「当たり外れ」だと言われたら
お客は怒るでしょう。

移動距離はいっしょだから、
と言われたってお客は納得しませんよね。

そこに市場があるのなら、
提供価値や需給関係で
価格が決まってもいいと思うのです。

お客に必要とされる度合が強いものが
値段が高くなる。

これが自然だと思うのです。

マーケティングって、
生活者の「不」を拾う所から
スタートするんですが
こうしたことは案外、
提供側が気づいていない視点。

この「不満」は
ビジネスチャンスでも
あります。

 

しかし、いままでは
システム上の制約などで
導入できなかった
この値付けの仕組を少しずつ
導入する企業が増えてきました。

これが
「ダイナミック・プライシング」です。

 

需要に応じて価格を変動させる
根付け方法のことです。

導入企業のひとつが
J1サッカーチームの
名古屋グランパスです。

考え方としては
「販売価格の適時最適化」です。

人気の試合は価格が高くなり、
人気がない試合は安く見ることができる。

実際には、価格は
さまざまな要素で決まってくる。

 

『~ 試合日程、席種、市況、天候、
個人の嗜好などに関するビッグデータ分析を基に
試合ごとの需要予測を行い、需要に応じた
チケット価格の変更を自動的に行なうことで、
ファンの皆様のニーズに応じた
“適正価格”で販売を行う仕組みです。』

“名古屋グランパスエイト”ホームページより

 

さらに、この価格は
同じ試合、同じ券種でも
購入タイミングにより、
価格が変動する可能性がある。

ネーミング通り、
“ダイナミック”に値動きします。

 

本来、マッサージのような
単純な仕組みのものは
価格設定の弾力化は同一店舗内で
簡単にできるはず。

 

やっていないのは、、、、

・利益が減る恐れ
・自分がレーティングされることへの抵抗
・需給関係が給与等の待遇に反映される抵抗
・その結果、スタッフが定着しなくなる恐れ

、、、、、からでしょう。

 

しかし、お客の側からみると
現状のシステムは
けっこう理不尽に映ります。

私の場合は、
何度もがっかりを繰り返しています。

個人的には
ダイナミック・プライシングに
賛成です。

名古屋グランパスが
導入できたのは
顧客データをデジタルデータ、
ビッグデータとして
解析できるようになったお陰です。

でも、よく考えると
このダイナミック・プライシングは、
市場のセリといっしょ。

魚や野菜など
自然条件に左右される生鮮食品は、
ご存じのように
昔から価格が変動します。

だから名前は目新しくても
豊洲で本マグロを
セリ落とすのと
本質的には変わりません。

人の経験値や勘の代わりに、
ビッグデータを使って
値決めにセリの機能を持たせた、
ということなのです。

この動きはもともと
ホテルや航空券などでは当たり前でした。

土地、給与、債券、通貨etc
も当たり前に価格は変動します。

今後は、いままで
思いもしなかった分野にも
このダイナミック・プライシングは
広がっていくでしょう。

そして、この影響は
私たち自身にも及んでくると考えます。

 

「いいね」の数を気にするのは、
その前兆だと考えてください。

中国では「信用スコア」を
一人ひとりに付ける
「芝麻信用」という制度が
始まっています。

「ジーマしんよう」
あるいは「セサミ・クレジット」と言われる
「芝麻信用」は中国のアリババグループの
関連企業が開発した個人信用評価システムです。

買い物などのクレジット記録などから
個人の信頼・信用度を可視化(ポイント化)し、
その信用度に応じてローンなどが借りやすくなる。

そんな制度です。

 

個人の信用度が値付けされ、
丸裸になる社会とは
信頼を落とす行為を強く排除しようとする
偽ホワイト社会になっていきます。

それは、正しさを強制する社会です。

個人的には自由が圧殺される社会を
イメージしてしまいます。

これが
ダイナミック・プライシング的な
すべての領域で人の行動や行為が
捕捉され、値付けされる社会の
シャドー(影)です。

ダイナミック・プライシングに賛成、、、
であるならば、このシャドーを
しようがないものとして受け入れる。

それが嫌ならシャドーをなくすアイデアを
考えなければなりません。

自由に値付けができもするが、
そのことを選択として選べる。

しかし、どうあろうと、
市場からは排除できない制度。

そういう制度が可能なのか。

私たちの創造性が試されます。

そして、2020年代は、
こうした新しい現実に向かい合う
10年になるでしょう。

 

 

音声はこちらから。

ヒマラヤFM エガミンのブランディング講座
バックナンバーより
第127回値付けの未来